京都府は、日本海側の防衛の要である「舞鶴」と、関西最大級の弾薬拠点となる「祝園(ほうその)」を抱えており、2026年度予算でもこの「南北の2大拠点」に巨額の投資が集中しています。(祝園・舞鶴 詳細は末尾のリンク参照)
① 府全体の概要・特徴:日本海防衛と継戦能力の「心臓部」
京都府の防衛上の立ち位置は、従来の「後方支援」から、より直接的な「戦闘継続能力(継戦能力)の維持拠点」へと変化しています。
- 北部(舞鶴): イージス艦部隊を擁し、日本海における弾道ミサイル防衛(BMD)と対潜戦の最前線。
- 南部(精華町・宇治): 陸上自衛隊の補給処・弾薬庫があり、南西諸島や日本海側へ送る物資・弾薬の巨大なストックヤード。
令和8年度予算では、特に南部の祝園分屯地への予算配分が突出しており、京都が「弾薬のハブ」として機能強化される点が最大の特徴です。
② 府内主要駐屯地・基地への予算配分と内訳
予算案や概算要求資料から読み取れる、主要拠点ごとの配分(推定含む)は以下の通りです。
| 駐屯地・基地名 | 所在 | 主な役割 | 令和8年度の主な予算措置・強化ポイント |
| 祝園分屯地 | 精華町 | 弾薬支処 (関西の弾薬庫) | 【突出した増額:約257億円】 ・大型火薬庫11棟の新設工事 ・追加3棟の設計 ・隊庁舎の建替え ※スタンド・オフ・ミサイル等の長射程弾保管を想定。 |
| 舞鶴基地 | 舞鶴市 | 舞鶴地方総監部 第3護衛隊群 | 【港湾・艦艇支援機能の強化】 ・イージス・システム搭載艦(ASEV)等の大型艦受け入れに向けた岸壁整備調査。 ・基地内の老朽インフラ更新(強靭化)。 |
| 経ヶ岬分屯基地 | 京丹後市 | レーダーサイト (米軍通信所隣接) | 【警戒監視・米軍連携】 ・Xバンドレーダーを運用する米軍との連携維持。 ・自身の警戒管制レーダーの維持整備。 |
| 宇治駐屯地 大久保駐屯地 | 宇治市 | 補給・施設科 | 【兵站・施設機能の維持】 ・関西補給処(宇治)の倉庫機能強化。 ・大久保における災害派遣能力(重機等)の維持。 |
| 福知山駐屯地 | 福知山市 | 第7普通科連隊 | 【即応性維持・生活環境改善】 ・隊舎の改修や車両整備場の更新など、基本的な「強靭化」予算。 |
③ 各駐屯地・基地の今後の変貌
- 祝園分屯地(巨大な弾薬ハブへ):精華町の学研都市近くにありながら、森の中に隠れていた分屯地が、「日本有数のミサイル保管庫」へと変貌します。令和8年度だけで11棟もの建設が進み、最終的には数十棟規模の増設が見込まれます。
- 舞鶴基地(「特定利用港湾」との一体化):海上自衛隊の基地機能だけでなく、隣接する「舞鶴港(商港区)」も特定利用港湾としての整備が進みます。これにより、自衛隊の護衛艦が普段使わない商船用の岸壁も、有事や訓練で使用できるスペック(大水深・高規格)に改修されていきます。
- 経ヶ岬(日米一体の要塞):米軍通信所があるため、ドローン攻撃等に対する防御能力(アンチドローン機材の配備等)が強化される可能性があります。
④ 府全体としての変化:特定利用空港・港湾
- 舞鶴港(特定利用港湾):政府により「特定利用港湾」に指定(または候補として有力視)されており、令和8年度予算以降、防衛省予算ではなく公共事業費の枠組みで、岸壁の延伸や水深の確保が行われます。
- 変化: 普段はクルーズ船や貨物船が使うエリアに、自衛隊の大型輸送艦(「おおすみ」型など)が出入りする頻度が増えます。
- 関西文化学術研究都市(けいはんな)との対比:最先端技術の研究拠点である「けいはんな」のすぐ隣(祝園)で、物理的な「弾薬庫」が急増するという、「先端科学と軍事兵站が隣り合う」特異な景観が形成されます。
⑤ 新規事業について
令和8年度における京都特有の新規・重点事業は以下の通りです。
- 祝園分屯地の「強靭化」加速(予算急増):単なる倉庫の増設ではなく、敵の攻撃(ミサイル着弾)による誘爆を防ぐための土堤(土手)の整備や、警備システムの高度化が含まれます。
- 舞鶴における「長射程ミサイル」搭載支援:トマホークなどの長射程ミサイルを搭載するイージス艦が舞鶴を母港とするため、それらを安全に積み込むためのクレーン設備や保管設備の調査・設計が進みます。
⑥ 他の県・地域とのかかわり
京都は「結節点」としての役割が強化されます。
- 対 大阪・神戸(港湾): 海外や他地域から大阪港・神戸港・舞鶴港に届いた弾薬・物資が、一旦「祝園」や「宇治」に集められ、そこから全国へ分配されます。
- 対 日本海側全域: 舞鶴は、山陰(島根・鳥取)から北陸(福井・石川)までの日本海側防衛をカバーする司令塔です。能登半島地震のような災害時だけでなく、有事の際の日本海ルートの護衛を担います。
⑦ 府民が被る影響の批判的分析
府民生活、特に施設周辺住民への影響は無視できません。
- 祝園周辺(精華町・京田辺市)のリスク:
- 「火薬庫」との同居: 学研都市や住宅街の至近距離に大量のミサイル・弾薬が保管されることになります。万が一の事故や、有事の際の「攻撃目標化」に対する不安が地域で高まっています。
- 輸送車両の増加: 弾薬を搬入・搬出するために、大型トレーラーが府内の幹線道路(京奈和道など)を頻繁に往来することになります。
- 舞鶴の「軍港化」深化:
- 特定利用港湾としての整備が進むことで、民間商港としての利用と自衛隊の利用が競合する可能性があります。また、原子力発電所(高浜・大飯)が近隣にある中で、基地が攻撃対象となった場合の「複合災害」のリスクも懸念材料です。
- 経ヶ岬の電磁波・騒音:
- 米軍レーダーの発電機騒音や電磁波に対する不安は、地元住民の間で長年の課題ですが、日米連携強化により、基地機能が固定化・永久化する傾向にあります。

