2026年度「防衛」予算・熊本

「令和8年度(2026年度)予算案」および、現在進行中の「防衛力整備計画(2023〜2027年度)」に基づき、熊本県に関連する防衛予算と今後の展望を分析します。現在、熊本県は日本の防衛戦略、特に南西諸島(沖縄・鹿児島方面)有事における「最重要後方拠点(兵站・指揮の要)」としての役割が急速に高まっています。

【熊本】長射程弾配備に1770億円


① 県全体の概要・特徴:南西防衛の「扇の要」

熊本県は、陸上自衛隊の西部方面総監部(九州・沖縄を管轄)が置かれており、地理的にも九州の中央に位置することから、「南西諸島防衛の司令塔かつ兵站(補給)拠点」として位置づけられています。

令和8年度予算においても、最前線(沖縄・先島諸島)への展開を支えるための「強靭化(抗堪性の向上)」「指揮通信能力の強化」に重点が置かれています。熊本はミサイル部隊や機動部隊が展開する前線ではなく、それらをコントロールし、物資を送り続けるための心臓部として機能強化が進められます。

② 県内主要駐屯地・基地への予算配分と内訳

詳細な基地ごとの金額は予算書(細目)の開示を待つ必要がありますが、公開された重要施策から以下の配分が確実視されます。

駐屯地・基地名所在主な役割令和8年度の予算措置・強化ポイント
健軍駐屯地熊本市西部方面総監部
電子戦部隊
【指揮機能の地下化・強靭化】
有事の攻撃に耐えうるよう、司令部機能の地下化や構造強化に多額の予算が配分されます。また、電子戦部隊への新型装備導入が含まれます。
北熊本駐屯地熊本市第8師団司令部
機動連隊
【即応展開能力の維持】
南西諸島へ緊急展開するための車両整備、弾薬・燃料の備蓄機能強化。老朽施設の建て替え(生活環境改善)。
高遊原分屯地益城町西部方面航空隊
(ヘリ部隊)
【航空機動・災害派遣】
CH-47JA(輸送ヘリ)やUH-60JA(多用途ヘリ)の維持・更新。熊本空港に隣接しており、空港の特定利用に伴う連携強化。
熊本病院熊本市自衛隊病院【医療後送拠点】
南西諸島で発生した負傷者を受け入れる最終後送先としての機能維持・強化。

③ 各駐屯地・基地の今後の変貌

  • 健軍駐屯地(要塞化とハイテク化):従来の「庁舎」といった趣きから、攻撃を受けても機能を喪失しない「地下要塞化」が進みます。また、宇宙・サイバー・電磁波領域を扱う専門部隊のハブとなり、アンテナや通信施設の増強が見込まれます。
  • 高遊原分屯地(無人機運用の可能性):予算案では「無人アセット(ドローン等)による防衛体制」が強調されています。既存のヘリ部隊に加え、将来的に中・大型無人機の運用拠点や整備拠点として機能が拡張される可能性があります。

④ 県全体としての変化:特定利用空港・港湾の整備

これが県民生活に最も可視化される変化です。政府は有事に自衛隊や海保が円滑に利用できるよう、インフラの機能を強化する「特定利用空港・港湾」を指定しており、熊本県内では以下が対象(または候補)として整備が進みます。

  • 熊本空港(特定利用空港):
    • 予算措置:滑走路の延長や駐機場の拡張(防衛予算ではなく公共事業費として計上されるケースが多いが、目的は防衛利用)。
    • 変化:F-35等の戦闘機や大型輸送機が離着陸可能なスペックへの改修。平時は民間利用ですが、訓練での自衛隊機の飛来頻度が増加します。
  • 熊本港(特定利用港湾):(別掲)
  • 八代港(特定利用港湾):
    • 予算措置:岸壁の「大水深下」工事。
    • 変化:大型の自衛隊輸送艦や護衛艦が接岸できるようになります。これにより、八代港から南西諸島へ向けた大規模な物資・車両の積み出しが可能になります。

⑤ 新規事業について

令和8年度予算案に見られる新規・重点事業のうち、熊本に関連深いものは以下の通りです。

  1. スタンド・オフ・ミサイル運用基盤の整備:長射程ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型など)の配備が進みます。熊本自体が発射地点になる可能性は低いですが、その「保管庫(弾薬庫)」や「整備拠点」としての整備が含まれます。
  2. 次世代指揮統制システム(JADGE等)の刷新:健軍の総監部が扱う指揮システムが、クラウドやAIを活用した最新型へ更新され、米軍との相互運用性が高まります。
  3. 無人アセット防衛能力(SHIELD):沿岸監視や攻撃を担うドローン部隊の整備が進みます。九州本土からの遠隔操作や、高遊原等を拠点とした運用体制の構築が始まります。

⑥ 他の県・地域とのかかわり

熊本は単独で完結せず、「九州・南西諸島のハブ」です。

  • 対 沖縄・奄美: 熊本(北熊本・健軍)から部隊を送り出し、物資を補給する関係です。沖縄が「盾」なら熊本は「槍の持ち手兼補給係」です。
  • 対 佐賀・大分: 佐賀(オスプレイ配備予定)や大分(大型弾薬庫群)と連携し、九州全体で一つの巨大な兵站ネットワークを形成します。熊本はそのネットワークの「頭脳(指揮)」を担当します。

⑦ 県民が被る影響の批判的分析

防衛力強化にはメリット(災害対応力の向上、地元建設業者への特需など)がある一方で、以下の懸念点・負担が県民に生じます。

  • 「攻撃目標」としてのリスク増大:健軍駐屯地には西部方面総監部があり、さらに指揮機能が強靭化(地下化)されることは、敵対勢力から見て「最初に叩くべき指揮中枢」として固定化されることを意味します。有事の際、熊本市東部周辺がミサイル攻撃の標的となるリスクは以前より高まっています。
  • インフラの「軍事利用」常態化:熊本空港や八代港の機能強化は、「災害時にも役立つ」という名目ですが、実質的には有事の輸送拠点化です。これにより、平時から自衛隊機・艦艇の出入りが増え、騒音問題や民間利用の制限(訓練優先など)が生じる可能性があります。
  • 弾薬輸送の活発化:大分県の弾薬庫群から熊本を経由して八代港や鹿児島へ弾薬を運ぶルートが常態化するため、県内の主要道路(九州道など)を弾薬を積載した自衛隊車両が頻繁に行き交うことになります。交通事故や火災時の安全性への懸念が生じます。

1. 健軍駐屯地:司令部地下化工事のスケジュール

西部方面総監部(健軍駐屯地)の地下化は、防衛省が進める「施設の強靭化(抗堪性向上)」の最優先事業の一つとして既にスタートしています。

  • 工事の全体スケジュール(目安)
    • 開始年度: 2023年度(令和5年度)予算にて、設計および着手金が計上され、事業化されています。健軍は、那覇(沖縄)、築城(福岡)、新田原(宮崎)などと共に「最初に地下化に着手する5施設」の一つに選定されました。
    • 完了目標: 防衛力整備計画(2023~2027年度)の5カ年期間内での完成、または主要機能の稼働を目指しています。つまり、2027年度末(2028年3月)までが一つの区切りとなります。
    • 令和8年度(2026年度)の状況:工事の最盛期にあたります。予算案には「主要司令部等の地下化等」として数百億円規模(全国計)が計上されており、健軍では既に掘削や躯体工事などの物理的な建設フェーズに入っていると考えられます。
  • 具体的な工事内容(推定)
    • 現在の総監部庁舎の地下、または隣接地の地下深くに、指揮通信システム、作戦室、電源設備、空調(毒ガス・生物兵器対応のフィルター等)を備えたシェルターを建設しています。
    • 核攻撃に耐えうる完全な地下都市ではありませんが、ミサイル攻撃や特殊部隊の攻撃を受けても、数週間程度は閉じこもって指揮を継続できるレベルの構造物が作られています。

2. 熊本空港:特定利用空港としての拡張計画図(概要)

熊本空港(阿蘇くまもと空港)は、有事の際に自衛隊の戦闘機(F-35等)や大型輸送機が利用することを想定した「特定利用空港」に指定されました。

一般に公開されている「計画図」そのものは防衛上の機微情報を含むため限定的ですが、国から地元自治体への説明資料等に基づくと、整備のポイントは「滑走路の延長」ではなく「駐機場(エプロン)の拡張」にあります。

  • 整備計画の具体像
    • 滑走路: 現在の3,000m滑走路でF-35やC-2輸送機の離着陸は十分可能なため、大規模な延長工事の計画は現時点では表面化していません。
    • 駐機場(エプロン)の拡張: これがメインです。民間機とは別に、自衛隊機が複数機駐機したり、燃料補給・弾薬搭載作業を行ったりするためのスペース(スポット)を増設します。具体的には、空港敷地内(おそらく東側や貨物エリア付近の空地)に、高強度の舗装を施した駐機場を整備します。
    • 誘導路(タキシーウェイ)の強化: 重量の重い自衛隊機が通行しても耐えられるよう、誘導路の路盤強化工事が行われます。
  • スケジュール
    • 令和8年度(2026年度)予算においても、特定利用空港・港湾の整備費として枠が確保されています。
    • 現在は「設計・測量」の段階から、一部で「用地造成」に入る段階です。完成時期は明言されていませんが、台湾有事等のリスクを考慮し、数年以内(2~3年程度)での整備完了を急いでいます。

まとめ:県民生活への視覚的な変化

今後数年で、以下のような光景が現実となります。

  1. 健軍周辺: 駐屯地内で大型の建設重機が稼働し続け、地下施設への入り口や排気塔などの構造物が目視できるようになる可能性があります。
  2. 熊本空港: ターミナルビルから見える場所、あるいは外周道路沿いで、新たなコンクリート敷き(駐機場)の造成工事が始まります。完成後は、訓練のために飛来した自衛隊機がそこに並ぶ姿が日常化するでしょう。

これらの情報は、今後の「防衛施設周辺対策事業」の予算配分や、地元自治体(益城町、熊本市など)の議会答弁でより詳細な「工区割」や「進捗率」が出てくるはずです。引き続き注視が必要です。

{title}New
タイトルとURLをコピーしました