2026年度「防衛」費・沖縄

令和8年度の防衛予算総額は過去最大の約8.8兆円規模となり、その核心は依然として「南西シフト(南西地域の防衛体制強化)」にあります。沖縄県は単なる駐留地から、有事の際の「最前線」かつ「機動展開の拠点」としての性格を色濃くしています。


① 沖縄県全体の概要・特長:南西防衛の「要塞化」と「兵站拠点化」

2026年度予算における沖縄の特長は、従来の「抑止(存在)」から「対処(実戦能力)」への転換が決定的なフェーズに入ることです。

  • 「スタンド・オフ防衛能力」の展開開始: 敵の射程圏外から攻撃可能な長射程ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型など)の配備がいよいよ現実のフェーズ(2026年度から順次)に入ります。
  • 師団への格上げ: 那覇の第15旅団が「第15師団」へ格上げされる準備・実行の年となり、指揮機能と歩兵戦力が大幅に強化されます。
  • 兵站(へいたん)の強靭化: 戦闘継続能力(継戦能力)を維持するため、弾薬庫の増設や燃料タンクの整備など、地味ながら重要な「補給・物流」インフラへの予算が重点的に配分されています。

② 沖縄県内にある駐屯地・基地への予算配分とその内訳

主な配分先は、那覇、宮古、石垣、与那国、および勝連(うるま市)です。

駐屯地・基地名2026年度の主な予算措置・動き目的・内訳
陸自 那覇駐屯地第15師団化への改編費・第15旅団を「師団」へ格上げするための施設整備、人員増(約2,500名→3,000名規模へ)、司令部機能の強化。
・普通科連隊(歩兵部隊)の増強に伴う庁舎整備等。
陸自 与那国駐屯地電子戦部隊の配備・2026年度に「対空電子戦部隊」を新設。
・敵の航空機やドローンのレーダー/通信を無力化する装備の導入。
・駐屯地拡張や地下化などの強靭化予算。
陸自 宮古島駐屯地施設整備費(約48億円)・弾薬庫や隊舎の整備、および抗たん性(攻撃に耐える能力)向上のための地下化や防護強化。
・地対艦・地対空ミサイル部隊の運用基盤強化。
陸自 勝連分屯地弾薬庫・補給処整備・長射程ミサイルを含む弾薬を保管するための大型弾薬庫の増設工事。
・沖縄本島における兵站の中核拠点としての整備。
空自 那覇基地滑走路・格納庫等の強靭化・F-15部隊等の抗たん性向上(分散パッドや防護壁など)。
・無人機活用のための検証飛行関連予算。

※金額等の詳細は、一部施設整備費が全国一括計上(約8,600億円の強靭化予算など)に含まれるため、個別の基地ごとの確定額として公表されないものもありますが、事業ベースでは上記が執行されます。


③ それぞれの駐屯地や基地がどのように変わっていくか

各拠点は「単独防御」から「ネットワーク連携」へ変化します。

  • 那覇(司令塔機能の強化):
    旅団から師団になることで、有事の際に沖縄県全域の部隊を指揮・統制する能力が飛躍的に高まります。また、住民避難などの国民保護措置における自治体との調整能力も強化されます。
  • 先島諸島(与那国・宮古・石垣):
    これまでは「配置すること」が主眼でしたが、2026年度からは「電子戦(妨害)」「ミサイル要塞化」が進みます。特に与那国の電子戦部隊配備は、台湾情勢を意識した情報収集・妨害能力の最前線となることを意味します。
  • 勝連・弾薬庫:
    単なる倉庫から、南西諸島全体へミサイルや物資を送り出す「補給ハブ」へと機能が拡大します。

④ 沖縄県全体としての変化:特定利用空港・港湾の整備

防衛省予算だけでなく、国土交通省予算等と連携した「特定利用空港・港湾」(有事に自衛隊や海保がスムーズに利用できるインフラ)の整備が2026年度も強力に推進されます。

  • 港湾(那覇港、石垣港など):
  • 大型の護衛艦や輸送艦が接岸できるよう、岸壁の延長や水深の確保(掘り下げ)が行われます。
  • 目的:部隊の急速展開能力の向上および住民避難時の大型船活用。
  • 空港(那覇空港、下地島空港など):
  • 戦闘機や大型輸送機の離発着を容易にするための誘導路拡張や駐機場の整備。
  • 2026年度予算では、これらのインフラ整備に全国で約1,000億円規模が計上されており、その多くが南西地域(沖縄・九州)に投じられる見込みです。

⑤ 新規事業:無人機防御網と「SHIELD」

2026年度の目玉の一つが、無人機(ドローン)を中心とした新しい防衛構想です。

  • 「SHIELD(シールド)」構想の具現化:
    ウクライナ情勢等の教訓から、無人機による攻撃から部隊を守る、あるいは無人機で洋上を監視するシステムの構築に約1,000億円が計上されています。沖縄周辺の海空域において、有人機だけでなく多数の無人機(水中ドローン、飛行ドローン)が警戒監視にあたる体制の構築が始まります。
  • 極超音速誘導弾・新型ミサイル:
    開発・量産予算が計上されており、これらは将来的に沖縄を含む南西地域への配備、あるいは九州からの支援攻撃を想定したものです。

⑥ 他の地域とのかかわり:九州との「一体化」

沖縄の防衛は、もはや沖縄県内だけで完結しません。「九州(熊本・大分)が後詰めし、沖縄が最前線」という構造が明確になっています。

  • 熊本(健軍)とのリンク:
    2026年度から配備が始まる「12式地対艦誘導弾能力向上型(射程1,000km超)」は、まず熊本の部隊に配備される計画ですが、これは九州から沖縄周辺の海域をカバーする、あるいは有事に沖縄へ機動展開することを前提としています。
  • 物資の供給ルート:
    沖縄の弾薬庫(勝連など)への物資は、九州等の火薬庫から搬入される体制となっており、九州の物流インフラ整備と沖縄の基地強化はセットで進められています。

⑦ 県民が被る影響

この予算執行により、県民生活には二面性の影響が生じます。

経済・防災面

  • 公共事業の増加:
    港湾・空港整備や基地強靭化工事により、建設業界を中心に県内への経済波及効果があります。
  • 防災機能:
    軍民分離を徹底した上で、「平時」であれば、港湾や空港のスペックアップは、台風災害時などの物資輸送や住民避難にとってもプラスに働きます。
  • 交付金:
    基地周辺対策費や再編交付金等が継続されます。

安全保障・生活環境面

  • 「標的」となるリスク:
    反撃能力(長射程ミサイル)や電子戦部隊、司令部(師団)が集中することで、有事の際に真っ先に攻撃目標となる懸念が、県民の間でより深刻になります。
  • 生活環境への影響:
    与那国の電子戦部隊配備に伴い、強力な電磁波への健康不安や電子機器への干渉を懸念する声が上がっています(防衛省は安全性を説明中)。弾薬庫増設による安全性への不安。
  • 「軍民共用」のジレンマ:
    平和利用されていた港湾や空港が「特定利用」に指定され整備されることで、「軍事拠点化」することへの心理的・政治的な反発(オール沖縄勢力等による反対運動)が予想されます。

総括

2026年度の予算は、計画段階だった「南西シフト」が、具体的な「部隊配備」「インフラ改造」「ミサイル搬入」という実行段階に移ることを意味します。特に那覇の第15師団化と先島諸島の電子戦・ミサイル拠点化は、沖縄が日本の防衛戦略において「不可欠かつ代替不能な要石」となったことを予算面から裏付けています。再び、沖縄の「捨て石」化が進むということです。

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