2026年度「防衛」予算・広島

 予算案は、防衛力整備計画(2023〜2027年度)の4年目にあたり、防衛力抜本強化の「完成」に向けた非常に重要な予算です。

令和8年度(2026年度)防衛予算案:広島県関連の分析

① 県全体の概要・特徴:兵站と海上戦力の「後方中枢」

 広島県は、防衛戦略上、「継戦能力(戦い続ける力)の維持」「南西諸島への展開拠点」という2つの役割が強化されています。

  • 海上自衛隊(呉): 横須賀・佐世保に並ぶ主力拠点であり、艦艇の修理・補給、そして新設される「無人機部隊」や「多機能複合防衛拠点」としての中枢機能。
  • 陸上自衛隊(海田市・その他): 第13旅団(即応機動旅団)を擁し、中国地方および四国への展開能力を持つほか、県内には大規模な弾薬庫(秋月など)が存在し、兵站(ロジスティクス)の要衝です。

② 県内主要駐屯地・基地への予算配分と内訳(主な事業案)

令和8年度予算案(政府案)における、県内関連の主要な配分見込みは以下の通りです。

基地・駐屯地所属主な予算項目・整備内容規模・備考
呉基地海自多機能な複合防衛拠点の整備数十億〜100億円規模
・ミサイル搭載可能な岸壁・荷役場の整備
・地下司令部の強靱化・再編
・新造艦(新型FFM等)の母港化準備
トマホーク等の積載能力強化
海田市駐屯地陸自第13旅団の能力向上・施設強靱化
・指揮通信機能の抗堪性(生き残り)強化
・共通戦術装輪車(歩兵戦闘車型など)の配備関連
即応機動連隊化に伴う更新
秋月弾薬庫陸自スタンド・オフ・ミサイル等の保管庫整備数十億円規模
(江田島市等)・長射程ミサイル(12式能力向上型等)用弾薬庫の増設
・安全対策・警備機能の強化
全国的な弾薬庫増設の一環

注記: 「多機能な複合防衛拠点の整備」は、呉地区の旧海軍工廠跡地などを活用し、民間の維持整備能力と自衛隊の補給機能を一体化させる巨大プロジェクトです。


③ 各駐屯地・基地の今後の変貌

 各拠点は、単なる「駐留・訓練の場」から、有事即応の「実戦的兵站拠点」へと変貌しています。

  1. 呉基地:「修理する港」から「攻撃力を装填する港」へ
    • これまでは艦艇の修理・ドック入りが主な機能でしたが、今後はトマホークや12式地対艦誘導弾などの「長射程ミサイルを艦艇に積み込む(VLS装填)」ための機能が大幅に強化されます。
    • また、増加する無人艦艇(USV/UUV)の運用・整備拠点としての性格も強まっています。
  2. 江田島地区:教育と弾薬のハイブリッド
    • 伝統的な教育訓練機能に加え、島嶼部の地形を活かした弾薬貯蔵機能が強化され、有事の際の補給・輸送の中継地としての役割が増します。
  3. 陸自 第13旅団(海田市):機動力の更なる強化
    • 配備が進む「共通戦術装輪車」等により、高速道路網を使った迅速な展開能力が強化され、南西諸島方面への増援部隊としての性格がより鮮明になります。

④ 県全体としての変化:特定利用空港・港湾の整備

政府の「特定利用空港・港湾」指定(有事の際に自衛隊や海保が円滑に利用するための枠組み)に基づき、広島県内のインフラも整備対象となっています。

  • 広島港・福山港等の重要港湾:
    • 大型輸送艦(おおすみ型など)が入港できるよう、岸壁の高耐震化水深の確保(浚渫)が進められます。
    • 令和8年度予算でも、これら「公共インフラのデュアルユース(軍民両用)」関連予算が計上されており、平時は物流・観光に使われますが、訓練や有事の際は部隊や物資の積み出し拠点となります。
  • 広島空港:
    • 輸送機(C-2など)の離着陸を想定したエプロン(駐機場)の拡張等の検討が進みます。

⑤ 新規事業について(令和8年度のトピック)

今年度の予算案で特筆すべき広島関連の新規・強化事業は以下の通りです。

  1. 「統合司令部」との連携インフラ:
    • 市ヶ谷に新設された「統合作戦司令部」と、呉地方総監部・第13旅団司令部を結ぶ「クラウド・通信ネットワーク」の強靱化。衛星コンステレーション(低軌道衛星群)を活用した通信機材が、呉所属の艦艇に配備されます。
  2. 無人アセット防衛能力の本格化:
    • 呉基地周辺海域において、水中無人機(UUV)を用いた警戒監視や機雷対処の実証・運用開始に向けた設備投資が含まれます。

⑥ 他の県・地域とのかかわり

広島県は「瀬戸内ロジスティクス」の要です。

  • 対 岩国(山口県): 岩国基地(米軍・海自)の航空戦力に対し、呉が艦艇による海上支援、海田市が地上部隊による防護連携を行う「海空・日米一体」の運用エリアです。
  • 対 南西諸島(九州・沖縄): 広島で整備された艦艇や、保管された弾薬・物資は、ここから九州・沖縄方面へ送り出されます。広島は「前線(沖縄)」を支えるための最も重要な「後方支援基地」の一つと位置づけられています。

⑦ 県民が被る影響の批判的分析

 急速な防衛力整備は、県民生活に多面的な影響を与えます。

  • 攻撃目標としてのリスク増大:
    • 呉基地がミサイル積載拠点・複合拠点化することで、有事の際に敵国からの「優先攻撃目標(ターゲット)」になるリスクが飛躍的に高まります。
    • 特に、弾薬庫周辺(江田島、広島市安芸区など)の住民にとっては、万が一の攻撃や事故時の被害リスクが懸念材料となります。
  • 港湾・空港の「軍事優先」懸念:
    • 特定利用港湾への指定により、平時から自衛隊艦艇の利用頻度が増加し、商用利用や観光(クルーズ船等)との競合、あるいは「街の軍事化」に対する心理的な懸念が生じる可能性があります。
  • 経済効果と依存:
    • 基地強靱化工事や造船需要により、地域建設業や造船業(JMU等)には短期的な特需(経済的恩恵)がありますが、長期的には地域経済が防衛予算に依存する構造が強まる側面もあります。

旧日鉄呉跡地利用問題

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